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Aの怪我を気にする父

ぬぐってもぬぐっても、ウエットティッシュが赤く染まっていく。

思ったより傷が深いのかと心配になったとき、

「A! Aの方がひどい怪我してるじゃない!」

Bさんの甲高い声が、あたりに響き渡った。

確かにAは、肘や手から出血していた。

ウエットティッシュは最初は父の傷口をぬぐったが、その後はA自身の血を吸っていたのである。

「大丈夫か? 怪我はひどいのか?」

「大丈夫です。大丈夫です」

Bさんが差し出すウエットティッシュは、次々と血に染まっていった。

それでもAは、「大丈夫です」と繰り返していた。

「どうなんだ、B。Aの怪我はひどいのか?」

心配そうに見えない目をAに向ける父は、本当にもどかしそうだった。

心配性の父のことだ、目が見えたら、自分のことなど放っておいてAの手当をしただろう。

だが、Aが負った傷がどこにあるかもわからない父には、手当をすることなどできなかった。

 
投稿者:松本麗華, カテゴリ:父が全盲であることについて, 10:08
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-, 2014/07/31 9:34 PM