選挙に行こう!(3) 憲法について調べてみた

選挙に行こう!(3) 憲法について調べてみた

 
 前回記事「選挙に行こう!(2) 憲法について調べてみた」の続きです。
 (「選挙に行こう!(1)」はこちら)
 
 
3.もちろん国民の権利も奪うよ!
 
 改正草案は、国民に義務を課すだけでなく、国民の権利の制約もしています。
 人権保障に「公益」に反しない限りと断りを入れているのは、前述の通りです。更に、現行憲法18条
「何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない」
 を、
「何人も、その意に反すると否とにかかわらず、社会的又は経済的関係において身体を拘束されない」
 に書き換えようとしています。
 この奴隷的拘束に関しては、「徴兵が奴隷的拘束に当たるのでは」という議論があったそうです。まずは条文から「奴隷的拘束」を削除することで、徴兵制への道を一つ開こうとしているのではないかと感じました。わたしは絶対に戦争に行きたくない。人を殺す覚悟も、自分が殺される覚悟もいらないです。
 
 もう一つわたしが思うのは、奴隷的拘束には、身体の自由だけでなく、精神的な奴隷的拘束も含むのではないかということです。精神的に逆らえず、奴隷のように従ってしまうことはあります。戦前・戦中も、「お国の言うこと」と、体は拘束されずとも、精神は奴隷のように拘束された人たちがたくさんいました。例えば、「竹槍で戦闘機を落とせ」と命じられ、竹槍の訓練を行う。普通に考えたら「届くわけないじゃん」「やるだけ無駄」とやりもしませんが、えいえいと、竹槍を空に向けて突き上げる。まるで思考を奪われた奴隷状態だと思いますが、このときはそうするしかなかったのもわかります。なぜなら、思考すると、「赤だ」「非国民だ」とレッテルを貼られて、悲惨な目に遭うからです。
 オウム真理教をやめた人たちの中にも、国から精神的に奴隷的拘束をされている人が何人もいました。それまで警察や公安調査庁と会い監視されていた人が、「もう公安とは会いたくない」と会うのをやめると、仕事場に「あいつはオウムだぞ」とばらされたり、微罪で逮捕されたり、強制捜査に入れられて生活を破壊されてしまいます。教団をやめ社会で働き生きていかなければいけない人たちにとって、国家権力の妨害は死活問題です。仕事がなくなれば、食事も食べられなくなってしまいます。体は拘束されなくとも、会いたくないのに警察や公安調査庁と会うしかなくなる。今でも、オウムを辞めた人で仕方なく、警察や公安調査庁との関係を続けざるを得ないでいる人が結構います。
 国家権力の飴と鞭の力が強大であり過ぎるがゆえに、人を精神的な奴隷的拘束状態に置くことは、一般人が行う以上にずっと簡単なようです。だからこそ、警戒し続けなければならないし、「いかなる奴隷的拘束も受けない」という条文が大切だと思います。
 自民党が人権守ろうと本当に思っているなら、「奴隷的拘束」に草案に残せばよかったのに、なぜわざわざ「奴隷的拘束」を削除したのでしょうか。
 
 
 自民党が手を加えた人権保障の条文で、わたしが最も危険だと思ったのは、現行憲法13条に、
「すべて国民は、個人として尊重する」
 とされているのを、
「全て国民は、人として尊重される」
 に変えたところです。
 現行憲法は103条ありますが、13条はもっとも大切な条文だとも言われています。「国民」ではなく、一人、一人の個性を大切にし、最大限に尊重をしようと、謳っているからです。
 個人が個人として尊重されるということは、とても大切なことです。どんな年齢であっても、女性であっても男性であっても、健康な人もハンディキャップを持った人も、学歴も生まれも関係なく個人として尊重される。
どんな主義主張を持っていてもいい。髪を染めたっていい。結婚しても、しなくてもいい。子どもを産みたければ産めばいいし、子どもが欲しくない人は作らなければいい。LGBTの人だって、二次元の人が好きな人だって、みんな個人として尊重される。素敵な社会だと思います。
 個人の尊重の重要性は、ナチスドイツによる、ハンディキャップを負った人を安楽死させたT4作戦や、社会的弱者が差別され迫害されてきた歴史に鑑みても明らかです。
 社会的に少数者でも、生きていていいんだよ。社会的弱者でも、あなたは大切だし、尊重されるんだよと言ってくれるのが、憲法13条です
 
更に、個人として1人1人が尊重されるという思想は、投票価値の平等など、国民主権とも強く結びつくものです。
 日本で選挙がはじめて導入されたのは、1878年(明治11年)のことですが、最初は男性、しかも高額納税者しか投票が許されませんでした。お金持ちの、お金持ちによる、お金持ちのためだけの選挙ですね。1924年には納税額による制限は撤廃されましたが、やはり男性だけ。女性にも選挙権が与えられたのは、なんと1945年、第二次世界大戦終戦後のことです。
 女性が一人の個人であり、女性であるということを尊重されていたなら、決して起こらなかった差別といえるでしょう。
憲法13条は、憲法の根幹とも言える、大切な条文です。
 
――ところが、自民党の草案では、「個人として」をカット「人」としてしか尊重しないと主張しています。「個人」は許されないのです。
 
4.平和がそこまでいやなの?
 
 自民党憲法改正法案では、国民の権利・自由を国のコントロール下に置き、義務を増設する一方、戒厳令としか思えない条文を追加するなど、国家の権力の増強が図られています。
 憲法改正法案第9条の二には「内閣総理大臣を最高指揮官とする国防軍を保持する」と、国防軍の創設が明記されています。憲法9条に限定しても、わたしはいまだ国民的な議論が深められているとは思っていません。
 また、自民党は、天皇を「元首」であると改正憲法に明記しようともしています。改正内容には、戒厳令や国防軍に関するものが多くあります。しかも、自民党はシビリアンコントロールさえ、外そうとしているように感じます。日本国憲法66条2項では、「内閣総理大臣その他の国務大臣は、文民でなければならない」と定めています。この「文民」は軍人ではない人を意味しますが、?軍人だった経歴を有さないものを指すのか、?過去に軍人だった経歴を有するが現在軍人でないものも含むのか、という争いがありました。それを、改正案では、「現役の軍人であってはならない」との意味に規定してしまったのです。つまり、自民党のいう「国防軍」で力を持った人が、ある日政治家に転身し、総理大臣になっても憲法上OKということになります。
 自民党は、平和憲法を破棄し、軍国主義へ戻りたいのでしょうか。
 
 
5.三権分立さえ……
 
 自民党は三権分立のかなめである、裁判所・裁判官の独立まで脅かそうとしているようです。
 三権分立を維持するためには、裁判官は国家権力のコントロールから自由でなければいけません。例えば「こんな判決を出したら、給料を減らすぞ」と言われたら、生活のために国の指示に従った判決を出してしまう危険性が高くなります。よって、現行憲法79条6項は、
「最高裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない」
 と定めています。
 ところが自民党草案では、
「第79条5項 分限又は懲戒による場合及び一般の公務員の例による場合を除き、減額できない」
 と、制限を取り払い、条件によっては裁判官の給料にまで口出しをするぞと、明言したのです。
 つまり、自民党は憲法上おおっぴらに、三権分立さえ破壊することをもくろんでいることになります。
 
5.改正手続を簡略化してその後は……?
 
 今回の憲法「改正」は、ほんの手始めに過ぎないとわたしは思っています。戦前・戦中に思想の取り締まりに猛威を振るった治安維持法は、最初は最高刑が懲役10年だったのに、わずか3年後には最高刑が死刑まで引き上げられました。
 法律も憲法も、一度安易に成立を認めてしまったら、その後どう変えられていくかわかりません。消費税の増税を考えてみればよく分かります。自民党は、今回の「改正」で、憲法改正手続を容易にしようとしています。
 
 現行憲法第96条は、改正手続に関して以下のように規定しています。
「この憲法の改正は、各議院(衆議院と参議院のこと)の総議員の三分の二以上の賛成で、国会がこれを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする」
 つまり、今の憲法だと憲法改正の発議をするためにも、両議院の総議員の三分の二以上の賛成が必要なのです。ところが、改正案だと、
第100条
「この憲法の改正は、衆議院又は参議院の議員の発議により、両議員のそれぞれの総議員の過半数の賛成で国会が議決し、国民に提案してその承認を得なければならない。この承認には、法律の定めるところにより行われる国民の投票において有効投票の過半数の賛成を必要とする」
 と、発議をするための人数制限を取り払っています。憲法という国家の要であるものに対し、議席の過半数さえ確保できれば、議院で議論する必要もなくなり、発議の乱発も可能になります。しかも、両議院の過半数の賛成で先に国会で議決(発議ではありません)してしまいます。
 国会の議決は重いです。「国会って国民の代表機関でしょ。国会で議決されたらいいんじゃないの」と、内容を吟味せずに賛成票を投じてしまう人もいるでしょう。
 なお、国民投票の「過半数の賛成」には、有権者総数の過半数とする説や、有効投票数の過半数とする説などありましたが、今回の草案では有効投票に一義的に定められています。
 
 憲法改正が容易になったら、自民党はこれからどうしていくのでしょうか? ただでさえ今回の改正案で脅かされている、立憲民主主義は守られるのでしょうか。戦前・戦中のように、全体主義を強制されるのでしょうか。
 
6.自民党の本音
 
自民党の「力ある人たち」が本音を語っている動画があります。百聞は一見にしかずです。ご覧下さい。
 
 
自民党 元法務大臣 長勢甚遠氏
「憲法草案というものが発表されました。正直言って不満である。一番最初にどういっているかというと、国民主権、基本的人権、平和主義、これを堅持するといっているんです。これをなくさなければ、本当の自主憲法にならない。たとえば人権がどうだと言われたりすると、平和がどうだと言われたとすると、怖じ気づくじゃないですか」
 
 自民党 外務副大臣 城内実氏
「日本にとって一番大事なのは、皇室であり国体だと常々思っている」
(動画には安倍さんの姿も見えますね)
 
 
自民党 政務調査会長 稲田朋美氏
「国民が大事なんて政治はですね、わたしは間違っていると思います」
 
 国民主権や基本的人権、平和主義があるといけない。国民が大事だという政治は間違っている。国体(戦前も国体の意味については色々な争いがありました)や皇室こそが大事だ。そのような考えを背景に、自民党の改正草案は作られているということです。 しかし、何だか、まるで悪い宗教のようです。現代日本を導いている政治家が、臆面もなくこんなことを言えてしまうとは――。
 
 自民党が憲法を「改正」したら、わたしたちの未来は大変なことになります。戦争になっても、政治家は戦場へは行きません。国民が人権を制約されても、政治家はお金もあり、特権もあるので生きていけます。
 自民党の人たちの発言は、自分たちが「国民」の一人であるという自覚さえないように思えます。選民思想を持った人たちが、自由に権力を行使できるようになったら――ぞっとします。
 
 憲法改正に賛成の方は、どの憲法の改正に賛成ですか?
 9条に限ってでしょうか。それとも、自民党の憲法改革草案に沿ってでしょうか。
 
自民党の、憲法改正法案を一度読んでみてください。
https://jimin.ncss.nifty.com/pdf/news/policy/130250_1.pdf
 
 その上で、どこに投票するのかを考えてみてください。
 
 今回、とても勉強になりました。自民党が予想していた以上に危険なことを考えているということを、初めて知りました。自分の未来を守るため、この手にある一票を大切に使いたいと思います。
 
 さあ、投票に行こう!
 
 

選挙に行こう!(3) 憲法について調べてみた」への7件のフィードバック

  1. この阿倍政権が推し進める憲法改正法案がその首謀者からして更にその法案の中身からして極めて危険な法案である事は事実でも、

    麗華さんはこの法案に反対する意味でしきりにあくまで選挙に行け投票しろと言う、

    私は全く無意味に思うが、

    麗華さんはこの法案に反対する幾つかの政党なり多くの候補者のどの政党なり候補者に投票しろと言うのか?

    実際に日本の国体政治においては政府与党の何かの法案なり政策に反対する野党なり候補者が選挙で票を集めその集めた票を元に国会の裏で政府与党と談合協議して利権に替える政党なり政治家が殆どな事は事実である、そうでない政党なり政治家を私は知らない、

    更に有力な野党政党などは選挙の前に与党と談合協議して法案や政策に反対し仮にその候補者全てが当選しても数の上で過半数に届かず法案なり政策が通過するように候補者調整なども事実である、

    私は30年近く前に旧社会党系の労働組合に関わった事があるが、当時は竹下内閣で3%からの消費税法案が国会で与党自民党から出され審議されこれに当時の土井委員長の社会をはじめとする野党が猛反発して選挙になりあくまで消費税法案廃案を主張する土井社会党が大躍進しての土井社会党政権間際まで行った事がある、

    この時に社会党の躍進に最も狼狽えたのは与党の自民党でなく当の土井社会党である、あくまで消費税法案廃案を公約に選挙戦を戦いその事で思う以上に票が伸びこのまま行くと政権を取る羽目になる、そうなれば選挙の公約上、消費税法案を廃案にしざる得なくなる、

    これに慌てた当の土井社会党は急遽に地方組織などで候補者調整を行い仮に全て当選しても過半数に届かない様に候補者数の制限をしたのである、

    結果として社会党は躍進したが過半数に届かず、自民党の消費税法案は通過し成立した。美味しいとこれだけ取り責任を回避した形である、

    この様な現実の政治において与党の法案が危険な法案だから選挙に行き何処でも良いから反対の主張する候補者や政党に投票をしろなど無責任である、

  2. 今回の話には、色々な面がありますね。
    まず、私は「奴隷的拘束」という言葉での表現は、具体性が欠けて、危険だと思います。奴隷制度のあった国ではないので、「奴隷」という意味が、極端に走ります。それよりは「経済的関係による拘束」と明確にした方が良いと思います。勤務先への圧力などは、「経済的関係」であっても「奴隷的」ではありません。
    また、「個人」か、「人」かという議論に関しても、「個人」よりは、「人」としての方が、範囲が広いように思います。個人という場合には、独立した人というイメージがあり、子供や親子の貧困問題などには、「人としての尊重」のほうがイメージがあうように思います。
    ただし、このように考え方で、議論を明確にしておくことが大切です。非常事態の話など、議論をしておかずに、福島原発事故を迎え、「東電社員に死ね」という総理大臣が出ました。(死ねと言っていないというのは、言い逃れです。あそこで踏みとどまり、海水注入も妨害されたら、死ぬ可能性が大です。)
    このような状況も考えて、きちんと憲法の中身を議論することが大事でしょう。
    見方を変えれば、このような議論ができる世界は良いものです。一昔前には、自衛隊の海外派遣は、議論すらできずに、テヘランの邦人救出は、トルコの好意にすがる、これはひどすぎますね。

  3. 警察や公安調査庁に会社から自宅にも話しがしたいと来られます。
    断る事はできません。
    断っても会うと言うまでしつこく会社などに連絡が来ます。
    俺は警視庁と会いました。
    そしたら警視庁に「今日何時間話したので1万円を渡します」と1万円貰いました。
    しばらくたったら、また会いたいと連絡が来たので「今度はいくらくれるの!?」って言ったら連絡も来なくなり、会いに来ませんでした。
    あれ???話しがしたいんじゃなかったの!?
    ただたんに嫌がらせがしたかったの!?って思いました。

  4.  戦争が出来るようにして何をさせたいか?というと、アメリカは、イスラム教とキリスト教の戦いに引きずり込みたいんですね。安倍さんは、それを呑まないと自身の延命は無いと悟った。

     アメリカの議会で約束してきたから安保関連法案は何としても成立させなきゃならない!

    って、日本人置き去りですよ。

     他国の宗教戦争に日本が関わっていくと、日本にも報復のテロが起こるでしょうね。
      

  5.  ゴラスさんの言う通り、今信頼出来る政党は無いかもしれない。ですが、確実に言えるのは、放置すれば今より悪くなるということです。それは確かです。
     おかしな制度だとしたら、それは我々(日本人)がおかしくしたのだし、それを正常に戻せるのも又我々しかいないのです。
     オバマ大統領も言ってます、「核廃絶は我々が生きている間には不可能かもしれない。しかし、無くそうとする絶え間ない努力が必要だ」と。

  6. まあ、麗華さんがここで殊更に憲法論議をするのは自身の将来を見据えてのその布石であるにせよ、

    私が伝えたい事は本当に善良な人間なら政治に関わるべきではない!

    政治を志す者の資格は醜悪である事であり

    政治に参加する者は蒙昧な者である、

    これはいつの時代も万国共通である、

    麗華さんがこの政府与党が推し進める憲法改正法案が危険な法案でありなにがなんでも阻止しなければならないと思うなら、

    麗華さんを発起人としてこの改正法案に対する実際にまだ成立してもいない法案に対して可能かどうか分からないがその違憲訴状なり行政訴訟なりの裁判を麗華さんを原告としてその共同原告を広く募れば良い、

    とは言えこれは日本の司法が名目通りに三権分立している事が条件だが極めて絶望的な感じがする、

    しかし選挙に行きこの憲法改正に反対する誰かしらの候補者や政党の主張を鵜呑みにして闇雲にそれに投票する様な実質上に単に山師を利するだけの行為よりはましである!

    麗華さんが発起人の原告として訴訟を提訴しその共同原告を世間に募るならその内容次第で私も参加したいし幾分なりともその訴訟費用のカンパもしたい、

  7. 元オウムが反対するなら、マトモな国民はみんな自主憲法自主独立に舵を取る

    とりあえず、安倍さんで憲法を変えたらいい、草案には人権やいろんなんが残るし

    さあ、オウムが利用し捲くったアジアの仏教徒はみんなシナにやられまくり、あなたも彼らのためにも自らの罪障消滅の為に反中しなさいよ

    さあ、パピヨンの始まりだ

    レッツ パピヨン!

末藤千博 龍谷大学名誉学生 へ返信する コメントをキャンセル

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