ある空港での出来事

ある空港での出来事

あれはどこかの空港だった。
記憶ははっきりしないが、インドだったかもしれない。
あのときわたしは、妹か弟を抱きかかえながら、父の後を追っていた。
父に追いついたのは、階下へ向かう階段でだった。
道がわからなくなりかけていたので、父の一行の最後尾が階段からはみ出して見えたときは、ほっとした覚えがある。
空港には、ほとんどの場合エスカレーターがついている。
このとき父が、なぜエスカレーターではなく階段を使っていたのか、わたしにはわからない。
エスカレーターがなかったのか、故障していたのかもしれない。
故障の場合、随行者が多いため、より多くの人が一度に降りられる階段を選択した可能性がある。
子どもを抱き父を探して走り回っていたわたしは、とにかく父に追いつけたことに安堵し、「なぜ階段を使うの?」と、他の人に聞く余裕もなかった。
この階段は確か空港の2階から1階に降りるものだった。
空港は1フロアの天井が高いので、2階から1階に下りる階段は長かった。
 

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