密室
一審の裁判の初期から、父はすでにおかしくなっていました。
それは先入観を抱かずに、父の様子を見れば明らかだったと思います。
日本語を話せない父。
何かしゃべっても意味の通らないことしか言えない父。
裁判所の命令に従えず、強制退廷させられる父。
1人うなずき、独り言を言い続ける父――。
そう、父は"公開"の法廷において、弁護人のみならず、裁判官とも意思疎通を成り立たせることは不可能でした。
父は裁判官の命令に従うことができずに、幾度となく強制退廷させられてきました。
一方で、"密室"で第三者の目がなく、いかようにでも記録を捏造できる場面において、父が「正常である」という"証拠"のでっち上げが行われて来ました。
「手続き教示」と称した裁判官による父との面会、西山氏による「鑑定」、東京拘置所内での「言動」、東京拘置所に作成された虚偽の「接見記録」。
控訴審において、マスコミが父の「詐病」を謳い、「正常」だと報道した情報はすべて密室で作成されたものです。
公権力が証拠のでっち上げをするのは、決して珍しいことではありません。
特に取り調べなどの「密室」では、どのような証拠もでっち上げられてしまう。
古くは、血痕のねつ造まで行われて死刑判決を出された財田川事件や松山事件、最近では主任検事証拠改ざん事件など、権力による証拠のねつ造は枚挙にいとまがありません。
しかし、父の場合、公平であるべき裁判所までが「密室」状態をつくり、証拠のねつ造まで行ったところが、より悪質だといえるでしょう。