階段から転落も――

階段から転落も――

父は今でも、弱視ではあるがわずかな視力があると、一般に報道されています。
しかし父は生まれたときから片眼の視力がなく、もう片目も1989年の秋頃にすべての視力を失っています。
裁判所側の鑑定人の西山医師でさえ、眼球結膜が綿のように白濁していると言っており、盲目であることは疑いありません。
全盲になったあとは、主にわたしたち娘が介助し、歩く際は杖代わりをつとめました。
杖代わりをつとめるときは、「あと5歩で階段です。3,2,1、階段に入ります。階段はあと6段です。3,2,1、階段終わります」というように、常に進路をアナウンスし続ける必要がありました。
例えば歩数を間違えてしまったり、ちょっとした出っ張りのアナウンスをし忘れてしまったりすることがあると、階段を転げ落ちるなどの事故を引き起こしました。
歩くときだけでなく、シャワーや着替え、食事の際にも介助は必要でした。
これらは当然父が逮捕される前のできごとであり、全盲を装う利益など、どこにもありませんでした。
 

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