ものを握ったり、ものを食べたりすれば正常?
西山氏は、"鑑定"の結論で、父に訴訟能力ありとしました。
理由は、父がものを握ったり、食べたりするということができるから――という、驚くべきものでした。
西山氏によると、ものを握ったり、食べたりできるのに、ものを言わないのは、昏迷(精神的な病気)ではなく、父が自分で選択した無言だというのです。
だから父には、ものをいう能力=コミュニケーション能力=訴訟能力がある、というのです。
訴訟能力については前回書きましたが、被告人が裁判の内容を適切に理解し、適切な行動が取れるかどうかによって判断されることになります。
ものを握ったり、何かを食べたりすれば訴訟能力があるなんて話は、聞いたことがありません。
正直言って、西山氏が何を言ってるのか、理解ができませんでした。
これを弁護人が説明してくださったとき、
「どうしてものを握ったり、食べたりすることができたら正常なのですか? 赤ちゃんでもそのぐらいできますよね……」
と弁護人に聞いたところ、弁護人は、黙ってしまいました。
こういうのを絶句というのかもしれません。
あまりに意味を取れない"鑑定書"に、弁護人は当惑していたように思います。
精神科医の先生にも、「西山は、医者として恥ずかしくないのか」と怒っている方がいらっしゃいました。
西山鑑定が出されたあと、弁護人は裁判所に、精神科医作成の西山鑑定に対する反論書3通、反論が含まれている補充書などを2通、合わせて5通提出しました。
この時点ですでに、6名もの精神科医が、意見書等を書いてくださっています。
しかし、"鑑定"前から判断が揺るがないほど結論が決まっていた裁判所にとって、精神科医の先生方の意見書は、意味をなしませんでした。